2022年10月31日

創業100年黒板屋が「打率を気にせず、より多くの打席に立て」を実践する理由

こんにちは。株式会社サカワの坂和寿忠と申します。創業から102年目を迎える黒板メーカーで4代目をやっております、36歳/男です。

弊社は創業以来作り続けている黒板に付加価値をつけて、業界に一石を投じるべく、チャレンジをし続けている会社です。普段外には話せない内容や苦労話などを、外向けの発信のため、そして自分のために考えをまとめておきたいと思い、1年前からほぼ毎月「創業百年黒板屋四代目の奮闘記」を書き留めてきました。
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さて、今回のテーマですが、数年前に目にしてから感銘を受けてスマホの待ち受けにしている「打率を気にするな、より多くの打席に立て」という言葉について触れてみたいと思います。このスタンスを貫いてきて、一定の成果と実践すべき内容が見えてきたので、まとめておきたいと思い、今回テーマとして選びました。サラッと読めますので少しお付き合いくだされば幸いです。

僕は実は大の野球好きでして、実際に小学校の高学年から中学校まで部活動でもやっていました。今はもっぱら見る専門ですが、今シーズンも素晴らしいペナントレースが繰り広げられましたね。(オリックスファンの皆さまおめでとうございます。巨人ファンなので、悔しいです。)
さて、野球では好バッターの証として3割を打てる打者という基準があります。10回打席に立ち、3回ヒットを打つと3割バッターになります。1回しかヒットが打てないバッターは1割打者となり、試合では使われることがなく、長く選手として在籍することはできません。
しかし、このビジネスの世界ではこの考え方は当てはまりません。
まず、野球の1打席とビジネスおける1打席とは重みが全く違います。毎試合大勢の観客がいて、試合数が144試合と決まっている野球において1打席1打席が選手やチームにとって重要であり、先発で打席に立てる人数も9人しかいません。そしてスコアボードや新聞にいつも打率などのデータが目に見える形で掲載され、この基準を元に活躍しているかどうか計られるわけですから、気にせざるを得ません。

しかし、いかんせんこの打率という言葉を知っている人が多いため、ビジネスにおいても何回中何回当たったかということばかり目に行ってしまい、失敗を恐れ打席にすら立てなくなってしまう、またが打席に立つまでにすごく時間を要してしまう、ということが起きていると考えています。この20年ほどでの日本企業の時価総額ランキングでTOP30を取れなくなってきているのも、こういった日本人の失敗への考え方が影響してるのではないか、とさえ思います。

参考記事:2022年世界時価総額ランキング。世界経済における日本のプレゼンスは?(STARTUPS JOURNAL)
https://startup-db.com/magazine/category/research/marketcap-global-2022

さて、誤解を恐れず言いますが、僕たちサカワという会社は打率1割未満のバッターです。
先ほど上げた通り、野球ではそのような選手は即戦力外ですが、実際に我々は現在創業から100年を超え、今もなお存続し続けている会社です。ではなぜ打率が低くても成り立っているのか、今までの経験から分かってきた、「打率を気にせず、多くの打席に立つ」ということの重要性をいくつか説明しようと思います。

項目を分かり易く3つに絞りました。

①チャンスは勝手に回ってこない。

野球の試合では、試合に出れば必ず打つチャンスが回ってきます。しかし、ビジネスにおいては自ら動き出さない限り、相手から与えられる仕事を待つしかありません。よっぽど自分たちからPRをして実績を積まない限り、向こうから話を持ってきてくれるなんてことは頻度が低いものですが、もし何もないところから急に相手から振られたり、お願いされる仕事というのは、既に中身が決まっていて、自分たちの強みを生かせることが少なく、金額も厳しく面白くない仕事が多いものです。もちろん提案しながらオリジナリティを出すということもできますが、良い案件に発展するのは容易ではありません。

自ら何も動き出さずに来る仕事を待っている、というスタンスはとても楽なのでこのような状態になりがちですが、それでは従業員の満足度や給料も頭打ちで、そもそも相手も対等には接してくれないので、無理難題を押し付けられる割にいつも低姿勢でヘコヘコしなくてはいけないため、辛い仕事になりがちです。
もちろん、企業努力をして仕事を頂ける会社から頼りにされ良い関係を築けている場合もよくありますが、結局は相手が主体となっている以上、仕事をを触られなければ、自分たちにも仕事が回ってこないので、時期や年によって受注量や利益率の浮き沈みがあり、毎年仕事があるのかないのか分からないヒヤヒヤする生きた心地がしない経営が続いているはずです。(弊社も数年前までそうでした。)その場合、来年の業績予想を立てることが難しいため、従業員の給料を思い切ってあげたり、新しいことに投資をするという決断がなかなかしにくいのではないかなと思います。(弊社も数年前までそうでした。Vol.2)

そこから抜け出すには、自ら攻めに転じることです。10年くらい前まで黒板の仕事がメインだった頃の我が社も、非常に厳しい価格で仕事を受けなくてはならず、毎年ジリ貧でした。この状況を打破するべくICTというものを武器に動き出したわけです。(詳しくはこちらのブログ「なぜ黒板屋がプロジェクターを開発したのか、その経緯についてお話します。」を読んでみてください。)

例えば、仕事が決まった先からしか来ない製造会社であれば自社の技術や機械を使って、商品を生み出すメーカーになり、世の中に自社の存在を知ってもらうなどが良いと思われます。何もその製品で社の売り上げを全て賄おうと思わなくて良くて、そのチャレンジによって名前が少しでも業界内で売れることで、結果メインの製造の仕事が増えていき、やりきれなくなった時に初めて内容を選ぶことができるようになります。そこで無理な付き合いを強要されるのではあれば断って、次の新しい取引先を拡げても良いし、既存のお客様に単価を上げてでも付き合ってもらえるように交渉すれば良いと思います。

また未だにホームページやカタログなどが古い会社や更新があまりされていないケースも度々目にしますが、これではチャンスがなかなか巡ってこないはずです。いまの時代、社屋の看板を綺麗にするよりも、先にホームページなどの人目に触れるものを綺麗に整え、社外への発信などの頻度も高めるべきです。現代の人は多くのサービスをスマホで触れてるため、デザインや整理された情報会社や会社が活動的かどうかのリテラシーは非常に高いため、会社の顔となるホームページなどを訪れる人に興味を持ってもらえるようにしておくことで、多くチャンスが巡ってくるように最低限の準備をしておかなくてはいけません。(弊社はここを非常に拘っていて、企画事業部というスーパーな人達が集まる部署があり、一目に触れるホームページやカタログ、広告やロゴ製作に至るまで全て自社で製作を行なっています。企画事業部についてはまた改めてブログで書きたいと思います。)

②最初は大振りせず、バントで。

次に打席に立ってみる重要性はわかっても、じゃあ実際にどうすればいいか分からないという悩みがあると思います。ここは完全に経験から得た知見ですが、製品作りにしても、社内改革にしても、PRの発信などにしても、まずはスモールスタートで始めるに限ります。ヒットやホームランを狙って大振りはせず、バントからやってみることをお勧めします。いきなりの大振りは大変危険です。このスモールスタートってよく言われている言葉なので当たり前と思いきや、意外とできないものなんですよね。既に世の中にある技術を応用すればできることを0から自社で開発してしまうとか、費用対効果や効果計測もしないまま、どんと大きな広告を載せてしまうとか。ほぼ直感で物事を進めてしまいがちですよね。(僕もいまだにそうです。何度失敗してもまだそうなる時もあります。少しずつですがバランス良くはなってはきていますが、従業員の方々いつもすみません。)

予算と時間をかけて、大々的にやると派手でとてもハラハラして楽しい部分もあるのですが、その反面失敗したときにもその反動とリスクが大きくなりすぎてしまい、チャレンジしたこと自体は素晴らしいはずなのに、結局取り返しがつかない状況になることもあるため、次の挑戦が怖くなったり、周りの目が気になって、次の打席に立てなくなります。また予算をかけてしまった以上、既に失敗が目に見えているにも関わらず、なかなか中断することができずにズルズルと戦況を悪くしていってしまいます。たとえ失敗してもすぐ後戻りできたり、止める決断を早くできる範囲での投資やチャレンジだとリスクが少なく良いですよね。モノの例えではありましたが、バントようにランナーを送って塁を進める打撃で、バットにボールを当てやすく無理なくチャンスを広げるという意味で、失敗が低く、リスクも小さくやりましょう、という意味となります。300万円の開発予算の中でやるなら、1点300万投資ではなく、30万で5つを試してみて、良さそうなものに残り150万かさらに追加費用をかけてドンとやるというやり方が間違いがなく良いと思います。

例えば、弊社ではユーザーさんを獲得する上で、費用対効果が高いのが展示会だということが、様々な施策をしていって分かったので、数年前から今の会社の規模では考えられないような予算をかけて出展します。(年間でその額は1,000万円を超えます。)色々と試してみた結果、間違いなく成果が出る方法がわかったので、そこはもう臆せず毎年予算を掛けるのですが、ちゃんと返ってくるものがあるのですからもう怖いことはないですよね。展示会出展の初年度は50万円くらいしか予算掛けていなかったんですから、今となったらすごいことだと思っています。
関連ブログ:展示会への出展は本当にメリットがあるのか。ノウハウを公開

③打席に立たないことが、1番の失敗。

最後です。野球の世界のように1打席で結果を求められるというは非常に酷なことです。ビジネスはそれと違って、いつでも何度でもやる気さえあれば打席に立つことはできます。打席に立ってみて、失敗を繰り返すことによってバットの当て方を学んでいき、少しずつ前に飛ぶようになり、いつかヒットやその延長線に素晴らしいホームランが出るわけです。もちろん初めはどうやって打席に立てばいいかも分からないし、失敗すること・既存のやり方を変えること・周りから賛同されないことなど恐怖があります。大抵の場合はここで思い切ることができず、面倒ごとは避けたいから、今まで通りに自分の経験値の中の範囲での行動しか起こせません。ただ、ビジネスを長くやっていこうと思うと、必ず所々で変化を起こさなくてはいけないはずです。何もせずに立ち止まっていること自体が失敗の始まりであり、チャレンジしないことが1番の失敗だという結論です。1年前と現在とを比較して、会社の状況や自分自身が全く違う考え方を持っているくらい、「あの時はまだこんなことやってたんだ」と過去を笑ってしまうようなくらいの感覚がちょうど良いと思います。

中国企業があらゆる業種でワールドワイドでトップに立ちつつある状況なのは、製品を構想してから世の中に出すまでが異常に早い、ということが大きく影響をしていると思います。僕が中国の方に聞いた話だと、はじめは欠陥が多く見られる製品を出しても、少しずつ改善してバージョンを重ねていき、最終的には完璧なものを作れば良いという考えを持っている、とのことでした。お客様からのクレームは喜ばしいことで、ありがとうございます!とお礼を言い、むしろお客さんに悪いところを探してもらう(バグチェックをしてもらう)くらいの気持ちだそうです。僕はその考え方が正しいと思います。

かくいう弊社では、製品だけに留まらず、社内制度も、働く環境も、企業理念やロゴも、部署や人事も、福利厚生や就労規則でさえも、ありとあらゆることを常にこの数年スクラップ&ビルドしてきました。

2014年 みらいの黒板プロジェクト発足
2015年 ハイブリッド黒板アプリ「Kocri」をリリース
2016年 ウルトラワイドプロジェクター「ワイード」発売
2017年 映写対応黒板 「ブルーグレー黒板」を発売
     Kocriとワイードの次世代バージョンアップ版 リリース
2018年 授業AIアシスタント 「Josyu」発表  
    「ワイードソフトウェア」リリース 
2019年「板書を保存し、再利用できる未来」を展示会で発表
         ディズニーで100周年イベント開催
2020年  企業理念、行動指針 等  企業ブランドを一新
     コロナでの休校支援による「Kocri」の無償提供実施
             社内武器づくりチーム発足
2021年  新ロゴマークを制定
    新ユニフォームを制作
             創業百年黒板屋四代目の奮闘記 開始              
2022年 自社ホームページのリニューアル
   「ワイード」累計5,000教室突破

初めは何をやってもうまくいかず、従業員からも理解を得られないこともありますが、試してみないと分からないことは、「とりあえずやってみよう」精神で、チャレンジしております。その都度付いてこないといけない彼らは変化を求められるため、苦労はさせてきていますが、全員で力を合わせて、毎月のようにドキドキしながら、でも確実に年間の目標を毎年クリアして、会社として成長を続けています。僕は付いてきてくれている勇気と根性があるサカワ社員を本当に誇りに思います。

そしてこれからも、まだ誰もやっていないことに挑戦し、ハラハラドしながら、転んでもまた立ち上がり、青春のような日々を過ごしていきたいと思います。

改めてになりますが、「創業百年黒板屋四代目の奮闘記」シリーズ一覧を読んで下さる方はこちらからどうぞ!

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この記事を書いたひと

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坂和 寿忠

株式会社サカワ4代目社長の坂和寿忠(トシタダ)です。愛媛県出身、1986年生まれ。大正時代に黒板製造業でスタートした弊社は創業100年を超え、教育分野という土俵はそのままに、今ではアプリを制作し、学校用プロジェクター「ワイード」を全国展開しています(今もグングン導入台数増加中)。 “日本一面白い黒板屋さんになる“ために面白いアイデアや仲間をいつも探しています。「こんな物を一緒に作れないですか?」「こういうこと出来ないですか?」なんていう面白いお話があればいつでも大歓迎です!FacebookやTwitterからメッセージお待ちしております。では、また! 「黒板屋四代目への直接相談フォーム」はこちら

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