月1回の週休3日制度を導入し、年休135日になった結果、社内にどんな反応が起きたか

黒板屋四代目の挑戦記 #23

こんにちは。

今回は弊社の働き方改革について触れていこうと思います。
普段は取材やメディアなどで会社の歴史や製品のことを取り上げていただくことが多いのですが、
サカワでは、それに加えて働きやすさを向上させるべく独自の福利厚生や休暇制度を設けていて、働く環境の充実を目指しています。
経営戦略で様々な事業計画を立てることはとても大切ですが、その根幹にまずは働く社員さんがいかに気持ちよく働けるか、その上でどこまでジブンゴト化して会社にコミットしてくれるかということが非常に大きいと思っています。
仕事以外にも趣味や家族の時間を大切にするのが当然の世の中なので、仕事だけに集中しにくい時代になっているとも思います。その中で、勤務中にいかに会社を勝たせようとしてくれる社員さんを増やしていくか。
今回は弊社の特別休暇制度について、弊社が実際に行っていることを取り上げていこうと思います。
少しでもご覧頂いている皆様のご参考になればと思っております。

私が社長に就任する2018年以前までは、弊社では土曜日に月1回の出勤をお願いしておりました。教育関係の製造業なので、学校が休みの土日に納品することも多いという理由だったのか、昭和の週6勤務の時代の名残りだったのか、土曜日の出勤をルール化していて、みんなそれが当たり前のように月に1度土曜日に出社してくれていました。
しかし、土曜日の勤務がある週は自分自身でも1週間が長く感じましたし、1日休むとまた次の1週間が始まることにしんどさを感じていた為、私が社長に就任したと同時に完全週休二日制に移行しました。遅すぎるくらいだったかもしれません。
なぜ週6で働く必要があるのか、それなりの理由や待遇を用意しないと、この時代では周りの会社さんとの労働条件の乖離があり、採用面など厳しくなるのではと考えました。

さて、土曜日勤務だった時は、年休108日でしたが、週休2日制になり、年休は120日まで改善しました。
やはりしっかりとまとまった休みを取ることは平日に頑張るためにも大切なことだなと思いました。
ただ一方で、会社経営者からすると休みが増えることに、どこか不安になってしまう気持ちも理解できます。私もそうでした。
でも、大切なのは何時間働いたかではなく、与えられた時間の中でどれくらいの成果を出せるのかという視点です。週40時間勤務しても、生産性が低く1つの業務に時間を掛けてやってしまうスタッフが多くなってしまっては、その積み重ねが会社の業績にボディーブローのように効いていき、気づいたときには取り返しがつかない状況になっているかもしれません。

私自身、代表になってからようやく週休2日制には移行出来ましたが、それでは普通の企業さんと並んだだけなので、ではここからどのような違いを作って、他の会社との差別化や競争力を作っていけばいいのか、勤務している時間に労働生産性を上げて成果を出しやすい組織にしていけばいいのか、と考えた時に、ちょうど「働き方改革」というワードが流行り、週休3日制を取り入れている企業さんが増えているというニュースを目にしました。そこで週休3日制について調べていったところ、いくつかのパターンで実施されていることが分かりました。

A.労働時間及び給与が減少型・・・週休3日で休みが増えた分、給与が減る
B.労働時間及び給与は維持型・・・週休3日で1日10時間などにして週40時間はキープ、給与も維持
C.労働時間を減らし、給与は維持型・・・週休3日で休みを増やして、給料は維持する

なるほど、どれも特徴があって企業さんも試行錯誤しながら取り組まれているのだなと思いながら、
どの働き方が最もサカワの社員さんが労働生産性が上がるのかということを考察しました。
ちなみに、弊社の従業員さんの平均年齢は36.7歳、男女比は従業員数26名に対して2:1の割合です。

まず、Aのパターンは合わないなとすぐに思いました。
働き盛りの方々に休みを取ってね、その分は引くよ、という会社の都合でのルールを強いるのは難しいと思います。例えば年齢が60歳前後になり、毎日勤務するのがキツイ人にとっては良いかもいいのかもしれませんが、バリバリ働いて稼ぎたいという人にとっては意思に反することになります。もちろん、この働き方をしたいという人は中にはいるかもしれませんが、弊社は中小企業なので、今回は全員統一のルールの下で行いたいという考えがありました。人によって働き方を変えられるという柔軟性が許容され、人の出入りを激しくても業績にあまり影響がない大手企業さんではこの仕組みは実施できるのではないかと思います。
ただ、普通の人の考えだと給料を減らされた分は、しっかり休みますよというスタンスになると思いますので、勤務中の生産性がこれによって上がるのかというと疑問です。もし仮に強制的に実施した場合は、良くて現状維持か最悪の場合、生産性が落ちたりコミットメントが落ちる可能性もあると思います。
「週休3日制をうちは取り入れてますよ!」という会社側のアピールに見えたり、人経費の削減の狙いが見え隠れしていて、あまりうまくいくように思えませんでした。

次にBのパターンです。
これは週にフル休める日が3日にはなりますが、平日は今までよりも勤務時間が長くなりますよ、というパターンです。
これもうちには合わないと思いました。今の時代、仕事ではないプライベートな時間はとても大切です。家族との時間や外食を楽しんだり、好きなことをしている時間は貴重で、プライベートの充実こそが平日の仕事へのモチベーションに繋がっていることは明白です。それくらい好きなエンタメや趣味が見つけやすい世の中になっているので、平日の勤務時間を長くすれば、共働き世代では家事を分担することも出来ませんし、帰りが夜遅くなっては好きなアーティストのライブに行くこともできません。もちろん残業も0にはできませんので、下手したら平日は毎日21時,22時に帰宅が当たり前になってしまいます。
そんなに長く働いては集中力も続かないでしょうし、週休3日になっても休みの間はずっと寝ている、というような折角のお休みを棒に振ることになります。これは週休3日にしたいが、仕事の時間は減らしたくないという経営者の意地が見えていて、無理くりな制度に思えますし、労働生産性の部分でも落ちるのではないかと考えています。

最後にCのパターン。働く時間は減らすけど、給与は今まで通りです、というパターンです。
普通に考えて、これは嬉しいですよね。
休日が増えて、今までと同じお給料をもらえるなんて最高です。しかも有休を消化することなく、特別休暇という形で休みがもらえるとなれば文句なしです。
また、労働生産性の部分ですが、単純に働く時間が減ってしまうのにも関わらず、売上や利益、給与をキープしなければいけないので、生産性を上げるしかありません。
なので必然と日頃の業務の効率を上げる方向に進んでいくなと思いました。
従業員満足度も上げられて、生産性も自然と上がっていくこの素晴らしい制度をなんとか実現したいと思い、実現に向けて動き出しました。

まずネックになったのは、ずっと週休3日をしなくてはいけないのかという部分です。
ここがとても大きな気づきだったのですが、こういった制度を取り入れるときに真面目な人は
0か100かで考えがちです。制度を取り入れたら、常にやらなくてはいけないし、絶対に続けなくてはいけないと思い躊躇してしまい、結局実行されません。
でも、必ずしも毎週3日休みにしなくてもいいですし、さらに毎月やらなくてもいいでし、何なら毎年やらなくてもいいかもしれないと気づいたのです。やった方が良くなりそうだから、まず実行してみることが大切だと思いました。

そこで弊社ではまずは
・月1回週休3日にする (休みは水曜日固定)
・毎月ではなくて、繁忙月は実施しない (5、8、1、2月は実施しない)
・2チーム制にして、会社自体は休業にしない

・業績が低下したり、トラブルが起きたり、有休消化率が落ちたらやめる

ということを決めて、全社員に宣言してスタートしました。
特別休暇制度導入の影響もあり、弊社の年間休暇日数は約135日となりました。
※年間休暇日数は年度によって多少異なります

月に1回であれば、月の労働日数が20日→19日になるだけなので、大きな影響はなく気軽に始められます。そして繁忙期はどうしても残業なども増えてしまいますので、その月に無理にやっても逆に不満に繋がるし、特別休暇を取れない人も出てくるのでフェアでありません。
また2チーム制という形を取って会社は休業にしないようにしています。これは休みが増えてお客様にご迷惑になることを避けたいということと2チーム制にして同じ部署の人がみんな同時に休まないようにすることで、お互いの仕事を日頃から把握していておいて、早めの情報共有を意識できることや、出来る限り業務の属人化を防ぐ狙いがあります。
また休みは水曜日(Aチーム第1水曜、Bチーム第3水曜)に固定しました。
好きな曜日に休みが取れるようにして欲しいという声もありましたが、会社としては“締め切り効果”も狙っています。特別休暇がある週は、月、火、水(休)、木、金、土(休)日(休)となるため、火曜日と金曜日に2度休日前の平日が来ます。明日休みなので業務を持ち越さないため、今日中にやっておこうという心理が働き、それだけで業務効率やタスク消化が進むのではと期待しています。

そして、ここがもっとも大切な部分かもしれませんが、いくつかの理由でうまく行かなくなったら、
“この制度はやめます”、と伝えることがとても重要だと思います。
今回で言うと、業績が著しく落ちてしまうこと、有給取得率が下がること、思わぬトラブルに発展すること、など予め予想できるケースを想定していました。
せっかくの特別休暇制度ですが、業績が落ちては所得も下がるのでWIn-WInではないですし、せっかくの元々持っている社員さんの権利である有給休暇取得率が下がってしまっては元も子もないですよね。
みんなの働きやすさの向上のために会社としてチャレンジしてみたいのですが、うまく制度設計が出来なかったり自社に合っていない場合も十分にあるので、その時はやめさせてくださいね、と伝えるのはフェアなことです。判断が間違っていたらちゃんと理由を説明して、謝罪さえ出来れば、大抵のことは理解を得ながら元に戻せると思っています。
これは今回のことに限らず、何もやらないよりは、何事もまずやってみることが重要ですね。

さて、実はもうテスト期間も含めて2023年の2月からスタートして、1年以上実施しているこの特別休暇制度ですが、やってみて結果や感想、従業員のモチベーションはどう変わっているのかやどんなことをして過ごしているのかなどをアンケートで取ってので結果をお伝えして、このブログを終えようと思います。

特別休暇制度に関する社員アンケートの結果

① あなたは特別休暇制度について、満足していますか。【二択】

特別休暇アンケート_1


21人中21人がはい、と答えてくれました。
まぁ、当然の結果ですね!
いいえの人がいたら、泣こうと思ってました。

② ①のあなたの回答について、その理由を教えてください。

・休日は混んでいて平日だと予約取りやすい場所(病院、公園、施設)等へ行ける。
・子供が幼稚園時間なので、子供の世話しなくていいから本気で休める
・夫婦でゆっくり話し合う機会が持てる
・子どもや奥さんが留守の平日の休みこそが、真の休日だからです!
・有休は用事ありきで使用しているので、何もないお休みを会社側からいただけるのは最高です。

 自分時間を満喫できています。

などなど、
子育てをしているご家庭であれば、土日は子どもの為に時間を使うので自分の為の時間が取れていないことがほとんどです。なので平日にお休みが取れれば、本当に自分に必要な時間に充てられるということですね。これが本当の意味での、“大人の休日”ですね。

③ これまで特別休暇の日にはどんなことをしましたか。具体的に教えてください。

・読書、サウナ、映画、ビール
・美容院、歯医者、ジム、その他商業施設(主に土日混雑する場所)
・病院や役所や銀行に行く、映画を見に行く、美容院に行く、お昼寝する
・数年ぶりに妻と2人だけで食事に行けました。(行くまでは最近行けていないことも気付かなかった)

やはり、休日だと混んでいて行けない場所を中心に行く方が多いのと、贅沢なお休みになるので、朝から運動したり、飲んでみたり、思いっきり寝てみたりと学生時代に戻ったような過ごし方も出来そうですね。
「特別休暇に何をしようか?を考えるようになった影響で、週末の休みも楽しみになった。」と言う意見もあり、また普通の土日の過ごし方もダラダラ過ごすだけではなくなり、ここにも良い影響が出ているように思います。
自己投資の時間にも充てることが出来そうなので、また今後変化していきそうですね。

④ 特別休暇を導入したことで、普段の業務への意識は変わりましたか。【4段階】

特別休暇アンケート_4

ここからは核心に迫るような内容になってきます。
そう思う、ややそう思うという回答が75%、そう思わない、あまりそう思わない人が25%と言う結果です。
平日の業務をやはりまだダラダラと過ごしているのかもしれないですね。これは会社のスケジュール管理などもシステムのせいやまだ始めて1年で業務の効率化まで意識を進められていないのかもしれませんね。
しかし75%の人が意識がポジティブに変わっているだけでかなりいいプラスです。あとはこのようなブログや社内発信を通じてもっともっと意識を変えてくれるように促すのはこちらの仕事ですね。

⑤ 上記④で「そう思う」、「ややそう思う」と応えた方に伺います。具体的にどのような意識を持つようになったかを教えてください。

・特別休暇のため短期的に業務をちゃんと終わらせる経験を通じて、身動きが取れないスケジュールの前日や金曜日などにもその意識を持つようになった。
・稼働日数は減るので遅延なく効率よく業務を進めるためにどうすべきかを先々まで考えるようになった。日や週単位ではなく月単位で業務計画を練るようになった。
・週5タスクを割り当てていたが、休暇があることで同じ部署内へ引継ぎが必要になる。ある意味チームワーク力が向上した。
・効率よく業務を行えるように考えて無駄なく動く。効率良くやらないと他メンバーに置いて行かれる、という危機感もあります。
・単純に休みの日数が増えるので、逆算や、今やっている事の振り返りを意識するようになった。出荷日の確認、材料の手配、現場や製造の調整など。

そうです、こうやって会社としては、1日マイナス(特別休暇)にすることで、平日への意識が向上することを期待していたので、過半数の人がこうして行動や考えが変わることは大変いい影響です。
まだその意識を持てていない人にも意識を高めていってもらえるようにスケジュールの組み方やタスクの優先順位の付け方などの勉強会や共有会を開いて行くと良いかもしれませんね。まだ1年ですねからね、頑張ります!

⑥ 特別休暇を導入してから、会社に対しての意識は変化しましたか。【4段階】

特別休暇アンケート_6




ここはほとんどの人が良い意識に変わってくれているようです。
これこそ、会社を勝たせよう、と言う意識の根幹だと思いますので、この制度導入は大成功だと言ってもいいのではないのでしょうか。
ちなみに有給取得率も前期と変わらず、89%近くという高水準でしたので、休みが単純増えたので会社へのコミットが上がったというような結果になった思います。

最後は嬉しい社員さんからのコメントを列挙して、これに浸りながらまた英気を蓄えて明日への活力にしたいと思います。

⑦ 上記⑥で「そう思う」、「ややそう思う」と応えた方に伺います。具体的にどのような意識を持つようになったか教えてください。

・従業員にとってプラスにしかならない制度を検討、実際に導入していただけることをありがたく思います
・挑戦屋に相応しい試みと思います。
・社員を大切に想ってくれていると感じています。
・年間休日の多さは働きやすさに直結する。しかし簡単に休日を増やせるわけではないと承知している。このような制度を設けられる会社は、柔軟な決断ができる会社だと思う。
・一般企業では週休3日制を導入するのに抵抗がある。なかなか会社全体で行動ができないが、サカワは企業理念に基づく「挑戦屋」まずはやってみるが大きく反映されている気がする
・有休だけでも他社に比べるとかなり取得しやすい環境なのに特別休暇までいただけてありがたいです!家族や友人にもうらやましがられるので鼻高々です。愛社精神増し増しです!
・休暇と成長が同時に行えておりやる前には気づけなかった。会社の今後の施策は全力で試し挑戦していく意識になりした。
・より一層業務に集中し、効率よく行えるよう取り組む。
・周りに話すと羨ましがられるので、社員思いの会社で働けている、という意識が強くなりました。
・特別休暇を継続させるためには、成果を出さなければという意識。

と言うことで、こんなに会社や業務に対しての意識を多くの人が向上してくれる制度をたった1年で効果も検証せずに、やめるわけにはいきませんので、2024年も継続して行いますことをここに宣言します。
念の為、4月が決算ですが利益率は目標よりも少々下がってしまいましたが黒字は十分に達成でき、売上は過去最高です。
これは特別休暇の影響でなく、そもそもの会社の仕組みや外部的な要因が大きく起因していると思いますので、来期はしっかりと目標をクリアして行けるように全社で強いチームになっていければと思いますし、
そして将来、月2回は特別休暇が取れるような効率的に稼いでいける組織になれたらと思っております!

以上、特別休暇を行うと会社への愛が深まりますよ、というブログでございました!実施に向けて何かご質問がありましたら、個人的にDMやメールなどください。いつでもお答えします。


【お知らせ】
弊社では福利厚生の他にも新しい取り組みを行っています。
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▼詳細・エントリーにつきましては「先生ソニック特設サイト」にてご確認ください。
特設サイトはこちら

「SENSEI SONIC(先生ソニック)」開催決定

イベントに関してもお気軽にご連絡ください。では!


【2024年9月28日追記】

2024年9月28日(土)放送のテレビ朝日『サタデーステーション』にて、「月1 週休3日制」の取り組みを特集していただきました。

【テレ朝news】独自の”週休3日”で売り上げ過去最高 老舗黒板メーカーの挑戦(外部リンク)

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この記事を書いたひと

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坂和 寿忠

株式会社サカワ4代目社長の坂和寿忠(トシタダ)です。愛媛県出身、1986年生まれ。大正時代に黒板製造業でスタートした弊社は創業100年を超え、教育分野という土俵はそのままに、今ではアプリを制作し、学校用プロジェクター「ワイード」を全国展開しています(今もグングン導入台数増加中)。 “日本一面白い黒板屋さんになる“ために面白いアイデアや仲間をいつも探しています。「こんな物を一緒に作れないですか?」「こういうこと出来ないですか?」なんていう面白いお話があればいつでも大歓迎です!FacebookやTwitterからメッセージお待ちしております。では、また! 「黒板屋四代目への直接相談フォーム」はこちら

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