2024年10月13日(日)に開催された「SENSEI SONIC(先生ソニック)2024」。学校の先生だけがステージに立つこのライブは、「今日の先生、カッコいい!」〜先生の情熱を音楽にのせて〜をコンセプトとした【学校の先生】限定の参加型音楽フェスです。
目次
なぜ老舗黒板メーカーが音楽フェスを開催したか
私たちが100年以上黒板を作ってきたそばには、いつも先生方がいました。今回は製品を提供する企業としてではなく「先生を応援する」立場として、先生を元気にし、先生という職業の素晴らしさや先生方の教育に対する熱量をもっと多くの方に知ってもらいたいと思いこの企画を立ち上げました。
2024年5月に開催宣言して約3ヶ月間、次第に口コミが広がっていき、総勢70組もの素晴らしい音楽が寄せられました。当日は100人を超える応援団が盛り上げてくださり、無事に駆け抜けることができました。改めまして、先生ソニックに関わってくださった全ての皆様に感謝申し上げます。
記念すべき第1回目の先生ソニック決勝LIVEでは、6組の先生方が熱い歌声を響かせました。テーマは「My応援歌」。先生方がこれまでの教員人生で励まされ、支えになった曲を披露していただきます。特別審査員にはサカワの社員でありロックバンド『藍坊主』のリーダー(Ba.)でもある藤森真一を迎え、優勝者には特別な賞品をご贈呈。3時間半に渡る決勝の舞台は、一時も熱が途絶えることがありませんでした。
このライブレポートでは、社員目線で決勝LIVEの様子をお伝えし、動画では公開しきれなかった先生たちのコメントも合わせてご紹介します。現役の先生やかつて先生だった方、子どもの頃に先生と関わったことのあるすべての方の心に触れる何かが見つかることを願っています。
懸命に頑張っている先生の背中を押せるように、サカワは全力で応援します。
第2回 先生ソニックの開催もぜひご期待ください。
【動画】先生ソニック2024 決勝LIVE ファイナリスト6組の先生の演奏
https://youtu.be/THWGUWIGOgc?si=gcOI4wygv_cF9FJ6
【動画】ダイジェスト&テーマソング「胸の中にずっといる」藤森真一
「ちびっ子がいると気合いが入ります!」小学校の先生のハッピーな音色【ヨッケリ音楽隊】
「なんと今日は記念すべき先生ソニック第1回。SENSEI SONIC、はっじまっるよー」
声高々に先生ソニックの幕を開けたのは、神奈川県茅ヶ崎市からやってきた「ヨッケリ音楽隊」。全員が小学校の先生で構成されています。ピアニカやリコーダーなど、どこか懐かしさを感じる楽器が次々と登場し、大人の中にも眠っている童心を蘇らせてくれるようです。まずはオリジナル曲である「パレード」を披露。
その場にいるみんなで合奏し、みんなが出演者になれる参加型のライブが始まりました。「大人でも子どもでも一緒にできるバンドがいいなと。たまに楽器を手に取り皆さんどうぞと、一緒にやっている」。普段はライブに縁遠い子どもも大人も、ヨッケリ音楽隊の音楽を通して一つになれます。
間奏中、ボーカル・河内先生は「ちびっ子がいると気合いが入りますね!」と子どもにマラカスをプレゼント。するとステージの裏から次々とマラカスが登場。ヨッケリ音楽隊による手拍子のレクチャーが行われ、観客が参加する準備が整ったところで、「山ねこバンガロー」を披露しました。この曲は小学校の教科書にも掲載されたことのある作品で、リズミカルでユニークな歌詞が魅力です。「10年ほど前から演奏し続けている」という言葉通り、音が体に染み込んでいるような、ホッと安心できる軽快なリズムで観客もノリノリに。手拍子を打楽器代わりにして、私たちも演奏に参加することができました。
全年齢ハッピーになれるステージがヨッケリ音楽隊の熱い想いそのもの。普段は5年生の担任で音楽と体育を担当していると言う河内先生は「今日は子どもたちに負けないくらい全力で楽しみました!」と弾ける笑顔でステージを後にしました。
【セットリスト】
自由曲:パレード(オリジナル曲)
エントリー曲:山ねこバンガロー
所属:神奈川県 茅ヶ崎市立室田小学校、他
さぁ行こう、あの日の夢の灯火は 君のためについている【楓】
2人のクリアな歌声と美しいハモリ、中央で打楽器のカホンを奏でる「楓」は緊張感のある息ぴったりのステージで魅了しました。その真剣な眼差しからは、教育者として、そして一人の人間としての決意がひしひしと伝わってくるようです。
高校時代サッカーチームメイトであった2人(写真左右)のバンドに、勤務先の学校で出会ったカホンの先生がメンバーとして加わり完全体となった楓。オリジナル曲の「メロディ」と「夢の灯火」で会場を盛り上げました。ステージ上手(写真右)に立つ先生は、かつては音楽だけで生きていく夢がありましたが、教員の道へ進みました。選んだ道のりの中で、子どもたちや同僚との出会いをきっかけに、歌い続ける決意をしたことをMCで明かしました。
「先生って、先を生きるって書くじゃないですか。それにとらわれちゃって、いいのかな日々忙しいのに歌なんかやってて」「先生という仕事はかけがえないのですが、日々忙しかったりうまく行かなかったり、うまく行かなくて。でもそこで、夢の灯火を燃やしてくれたのは子どもたちでした」
元教え子の小学生が中学生になり、先輩の立場で小学校に来た際に『努力って報われるから、みんな頑張って。そう先生から教えられたから』そう言葉を残しました。話を聞いていた小学生の子どもたちの目の輝きは今でも忘れられないと言います。
「そういう灯火をみて、もっともっと僕も頑張らなきゃと思うし、歌い続けていきたいです」
卒業後もライブにきてくれる子どもたちのためにも。もう今や、楓だけの曲ではなくなっていました。あの日の夢の灯火を胸に、先生として、音楽家として輝く姿がステージの上にありました。
【セットリスト】
自由曲:メロディ(オリジナル曲)
エントリー曲:夢の灯火(オリジナル曲)
所属:宮城県 仙台市立人来田小学校、他
みんなに感謝を伝えなきゃ。1回きりの3年生をこんなに輝く日々にできたこと【あだちたち】
愛知県から参加した「あだちたち」は、先生ソニックのためにあだち先生と現役の軽音部生徒で結成されたグループ。スピッツの「愛のしるし」とオリジナル曲「GIFT」を披露しました。「GIFT」は7年前、あだち先生が担任を務めた「307」で過ごした経験をもとに、特別な1年間への感謝を表現するために制作したのがこの曲でした。そして今年、また同じ「307」を担任している縁に導かれるようにして、先生ソニックへ出場することに。
「ああ みんなに感謝を伝えなきゃ 1回きりの3年生をこんなに輝く日々にできたこと」。
卒業を目前にした生徒たちの想いでもあり、先生からのエールでもある、クラスの絆を繋ぐ共通のメッセージのように感じられました。忘れられない思い出が歌となり、いつまでも色褪せずに歌い継がれていく───歴史の一部を垣間見ているようです。
MCの途中、観客席で照れくさそうに笑い、真剣な眼差しでステージを見つめていたのは、応援団として会場に駆けつけた元「307」の生徒の皆さん。あだち先生は7年前も今も変わらず人気者の先生であろうことがひしひしと伝わってきました。
7年越しに鳴り響いた「GIFT」。高校生活の一瞬一瞬の楽しさやかけがえのなさが、軽快なメロディとキャッチーな歌詞で表現され、温もりに満ちた空間を作り出しました。
【セットリスト】
自由曲:愛のしるし / スピッツ
エントリー曲:GIFT(オリジナル曲)
所属:愛知県 名古屋市立向陽高等学校
悩んでも「ええねん!」初担任の先生が放つ情熱のステージ【Come!Come!3824】
「我々、有給休暇取得してます!」と明るく挨拶したボーカルの権守先生。学校説明会のスケジュールに重なってしまったものの、「せっかくいただいた機会」と出場を決意。全員が同じ高校の先生をしており、バンド名の下4桁の由来は学校の電話番号から拝借したといいます(笑)。たくさんの生徒や卒業生が応援する中、会場と息の合ったやりとりで笑いが絶えないステージでした。
38歳で初めてクラス担任を持つことになったボーカルの権守先生は、その悩みや迷いをすべて肯定してくれるウルフルズの名曲「ええねん」にどれだけ救われてきたかを熱く語り、MCから流れるようにして2曲を演奏。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの「CISCO」からウルフルズの「ええねん」の最後の最後まで、パワフルかつ疾走感のあるサウンドを会場に響かせました。
「とにかく走り抜けるように演奏して、観客にインパクトを与えたかった」
先生と子どもたちが信頼関係で繋がっていることは、コールアンドレスポンスからも明白でした。ライブハウスを支配し、その場の空気を“Come!Come!色”に変えていく4人。まさに「今日の先生、カッコいい!」を体現してくれました。
【セットリスト】
自由曲:CISCO / THEE MICHELLE GUN ELEPHANT
エントリー曲:ええねん / ウルフルズ
所属:東京都 東洋高等学校
子どもたちはすごいんですよ。それをどうしても伝えたくて【ナオハル】
「ナオハル」の二人、小野先生と生徒のなおたろうさんは、福岡県のフリースクール「コンコン」から参加しました。「コンコン」は不登校の子どもたちをサポートする場で、なおたろうさんもそこに通う中学3年生です。今回のステージは、小野先生が「なおたろうくんが活躍できる場を提供したい」という熱い思いから実現したものでした。
「楽しいから緊張はしない」それをパフォーマンスで証明したなおたろうさん。
幕が上がり二人が深呼吸したあと、なおたろうさんがメインボーカルを務める1曲目「精神ロック」が始まりました。なおたろうさんの第一声を号令がわりに、プロのミュージシャンがバックバンドとしてそれぞれの楽器を掻き鳴らします。私たちの胸に直接飛び込んでくるような、まっすぐな歌声。それを小野先生の優しいコーラスが包み込みました。
続く2曲目は小野先生がメインボーカルでパフォーマンスする、藤井風の「帰ろう」。この曲には小野先生の教育者としての気付きが込められていました。
「教員1年目はとっても大変でしたが、でもそれを乗り越える時にこの歌があって。私の教育観を作った歌です。 子どもに対して私たちが与えられるものがあるんだ。そしてそれは私たちが元々、誰かからもらった教育的な愛なんだって気づくことができました」
温かく鳴り響く歌声に会場はうっとり。ステージを終え、先生ソニックを通して得た経験を話してくれました。「先生と中学生という関係ですが、音楽をする人として、なおたろうくんに対して真っ直ぐ自分の意見を言わないとなって。それが本当に大きな気付きでした」
「(不登校の子どもたちは)本当にすごくみんな苦しんでいて。その苦しみっていうのは、その子たちのせいじゃないですよ。社会がその苦しみを生み出してると思うんです。でもみんなすごいんですよ子どもたち。それをどうしても伝えたくて今日このイベントに参加したいなと思いました。少しでも伝わっていたら嬉しいです」そう力強く語りました。
【セットリスト】
自由曲:精神ロック / ヤングスキニー
エントリー曲:帰ろう / 藤井風
所属:福岡県 フリースクール「コンコン」
「自分の好き」と一生懸命向き合う姿はいいものなんだ【熊王 崚祐】
「昨今教員はブラックだと言われていまして、実際自分も朝早く出勤して夜遅くまで仕事して、その割に子どもに全然響かなかったり伝わりきらなかったり」
それでも教員をここまで10年続けてこれた理由は「自分がやったことで、子どもたちがすごい嬉しそうに生活をしたり喜んでいる姿」があるからだと熊王先生は言います。「本当に教員やっててよかったなっていつも思っています。そのために教員を一生懸命続けてられてるな」。
1曲目の藍坊主の「伝言」では、作詞作曲者である藤森を含むバックミュージシャンとともに、疾走感あふれる演奏で観客の胸を熱くしました。
先生ソニックで唯一、グループではなく一人で参加された熊王先生。教員として大切にしているのは、「自分の好き」を大切にすることです。先生自身、小さい頃からギターを弾き、友達とも音楽を通じて絆を深めてきた。音楽が支えでした。その経験が今、教師としての人生に繋がっています。
子どもたちは、年をとるにつれ次第に自分の「好き」を隠してしまうことも珍しくない。成長するにつれて、他人と比べたり、恥ずかしさから自分の本当の気持ちを抑え込んでしまう。でもそれは「とてももったいなく感じる」と熊王先生。「自分の好きをもっともっと大切にしてほしい。好きに向き合っていると、きっとその子の人生がもっと豊かになるはずだから」。
そしてオリジナル曲である「こんな日だから」をギターで弾き語りしました。一気に熊王先生の世界観に引き込まれ、固唾を飲んで聞き入る観客。
過去の悩みや困難は全て「今」に続く礎となっている。“先生”をしながら音楽を楽しみ、「好きに向き合う」姿勢が、そのまま子どもたちへのメッセージとなり会場中に広まっていきました。
【セットリスト】
自由曲:伝言 / 藍坊主
エントリー曲:こんな日だから(オリジナル曲)
所属:群馬県 館林市立第三小学校
先生最高。ありがとう【先生ソニックSpecial Band feat. 藤森真一】
3時間を超えるライブもいよいよ結果発表の時。曲とメッセージを通して「先生を勇気づけられる」点に着目し、優勝は熊王崚祐先生に決まりました。優勝商品として、学校の黒板いっぱいに大きく投影できる、ウルトラワイド型電子黒板「ワイード」が贈られます。また、5組のファイナリストの皆様には副賞として、黒板に貼るだけで映写対応ホワイトボードになる、黒板着せかえパネル「KisePa(キセパ)」1組に1セットが贈られました。
イベントの最後には『藍坊主』であり『サカワ』の藤森が先生ソニックのために作曲した「胸の中にずっといる」で締めくくりました。この曲は先生ソニックのテーマソングでもあります。藤森自身、一般企業で働きながらバンド活動を精力的に続けており、先生と音楽を両立する先生の姿に重なる部分があります。
「先生ってもっとこうかっこよくて完璧な、そういう意味でかっこいいだと僕思ってたんですけどね。みんな弱音を吐ける、そういう、かっこいい大人なんだな。だからみんながついてきてくれるんだな。僕は、未来は明るいと希望を持てた1日でした」
先生たちは本当に素晴らしい、そしてかっこいい存在です。でも同時に知ってほしい。明るく堂々とした姿の裏には日々の悩みや葛藤、困難を乗り越えようと奮闘する姿を。
♪あの人はどこにいる 僕の心の中にいる 卒業をして大人になっても 胸の中にずっといるーー
「先生最高!ありがとう!」
重労働問題や成り手不足の教育業界。
音楽を通じて先生のカッコよさを世間に広めたい
先生の労働環境に関する厳しい一面ばかりがニュースになることに危機感を覚え、先生方がもっと魅力的な職業だと認識してもらえるように教育メーカーとして尽力したいと考えております。
先生を元気にし、かつ先生の魅力を世間に発信する活動を通して、先生方の熱量をもっと多くの方に知ってもらうことで、少しでも教育業界の光になればと思っています。
また、子どもたちに「先生カッコいい」と思ってもらえる機会を設けることで、「先生を目指す子どもたち」を少しでも増やし、教育業界の人手不足を解消する一助になれば幸いです。
初めて開催した先生ソニックは、いくつもの名場面を残して幕を閉じました。この先も多くの方々を巻き込みながら、応援の連鎖を生んでいけるように努力します。
最後までお読みいただきありがとうございました。