「風立ちぬ」 ただの黒板屋から脱却し、人生を変えようと思ったきっかけ

社長ブログ #3

こんにちは。株式会社サカワの坂和寿忠です。

名前の読み方は「としただ」と読むのですが、そのまま変換しても漢字が出て来ないので
「すしちゅう」と打っていつも変換しています。では、今回もよろしくお願いします。

さて、今日は私たち黒板メーカーのサカワが今ではアプリを開発したり、プロジェクターを開発したり、不燃木材を製造したりと、新しい取り組みを始めて進化してきたのですが、僕自身がなぜそんな大きな舵を切ろうと思ったのか、そのきっかけを今回はお話ししようと思います。
なぜ今この話をするのかというと、先月の8月27日に金曜ロードショーで放送されたスタジオジブリ作品「風立ちぬ」という作品を観たことが大きな一つのきっかけになったからです。

7年前に遡ります。
私自身、新卒で入社して4年経ち、社会人として営業の仕事にもなれて実績としても順調で、いってみれば順風満帆でした。
ただし、なぜその業務をやっているのかということは深くは考えずに、商品が売れるからやっているという感じでした。
決して適当にやっているわけではなく、お客様の要望に対してお応えし、求められいることをしっかりとこなしていましたが、ただなんとなくどこかやらされている感じはあって、自ら思いをもってやっている感じではありませんでした。

そんな時に2013年に公開された宮崎駿監督のジブリ映画「風立ちぬ」に出会います。
当時この作品をもって宮崎さんがアニメーション映画から引退するという節目の作品だったので、ジブリが大好きな私は宮崎さんが人生最後の作品にまたラピュタのような冒険もので締めくくってくれたら最高だな、ぐらいの気持ちで映画館に足を運びました。

しかしその浅はかな期待に反し、戦時中に生きた零戦の設計者・堀越二郎の半生をリアルに描いていて、分かる人だけ分かればいいというような観る人を突き放したような作品でした。いつも子ども向けに作ってきた宮崎駿さんが、最後に心から今の日本人に伝えたいメッセージを込めた映画だったのです。

映画の冒頭に出てくるオープニングのタイトルは、

“風立ちぬいざ、生きめやも” (風が吹いた。生きようと試みなければいけない。)

戦争の悲惨さを伝えたいために作ったものではなくて、戦時中という大変困難な時代でも、懸命に自分の力を限りなく尽くして生きる当時の日本人の”働き様”を描いています。
中盤のシーンで、結核になってしまった妻の為、看病に向かう汽車の中で、涙を流しながらそれでも飛行機の翼面荷重の計算をし続ける堀越二郎の横顔は今でも脳裏に焼き付いています。

見終わったあとに心に残ったモヤモヤと焦りは相当なものでした。
果たしてこの主人公のように、自分は今を懸命に生きようとしているのか。
結局はなんとなくその日をこなしている日々で、何にも事を成していない人生なんじゃないか。
誰かの目を気にして、何かを真似したようなコピーした生き方で、せっかくもらった自分の人生を全うしているとは到底思えないと感じました。

そこで、決心しました。自分にしかできない、まだ誰もやっていないことを見つけよう。
そして、(風が吹いたら)やらなくてはいけないと思い立ったら、必ず実行する人生にしよう。
誰かのために役に立つ仕事をしようと。

その日を境に中途半端に目標もなくやってきた人生に見切りをつけ、自分には一体に何ができるのか模索する日々が始まりました。
心からやりたいことでないといけないし、しかしいきなり飛び越えたことはできなし。

そして考えた結果、僕が一番なんとかしなくてはいけないと思っていたのが、やはり”黒板”だったのです。

弊社は102年前に黒板メーカーとして創業し、現在まで真面目に黒板を製造し、全国に販売してきたのですが、生徒や学校の減少により、年々価格競争が激化し、黒板1枚の単価が昔に比べて厳しくなっていました。
黒板は今も昔も教室や授業の中心を担っていているにも関わらず、黒板の価値が落ち続けていることに非常に悲しい気持ちを感じていました。そこで黒板を進化させて、新しい価値を創造するような事業を作ろうと決心しました。ただ、安直に電子黒板のような黒板に取って代わるものではなく、良いところを残しながら、それでいてアナログだけではできない付加価値をつけていくイメージを構想にたどり着きます。

そして2015年に生まれたのが、ハイブリット黒板アプリ「Kocri(コクリ)」です。
黒板にプロジェクターを投影して、スマホアプリから図形や罫線などを表示させて、アナログのチョークとデジタルのコンテンツを組み合わせて授業をするというハイブリットな製品です。
決して今までのアナログの良さの授業を大きく崩さず、しかし不便だった部分をデジタルで補完して、誰でもすぐに使える製品づくりを目指しました。

当時アプリを作ることなんて誰もやったことがなく、何から始めればいいのかそれこそ右も左も分からない状態でしたが、面白法人カヤックさんという会社との出会いをきっかけに製品化まで最終的にたどり着くことが出来ました。Kocriの発表後、非常に多くの反響ををいただき、サカワの初めてのチャレンジを世間に受け入れて頂きました。
(カヤックさんは「つくる人を増やす」という企業理念の元、様々な面白コンテンツを世の中に送り出している会社さんですが、黒板を進化させたいという我々の思いに共感をしてくださり、こんな素人の僕たちと真剣に向き合ってくださいました。当時のクリエイターの皆様には改めて感謝申し上げたいです。
そして、タイムリーな話なのですが、なんとカヤックさんでKocriのメインエンジニアをしてくださった西崎さんが先日9月1日にサカワに入社してくださいました。なんという縁でしょう。これからよろしくお願いします!))

ハイブリッド黒板アプリ「Kocri」 | 面白法人カヤック

彼らとの出会いから製品をリリースするまで、ずっと”思い”だけを武器に動き続けたので、思いは行動するため原動力・周りを巻き込む源なんだなと、初めて感じました。
今まで、ただ目の前の仕事をなんとなくこなしていた当時の自分には感じたことのない”働き様”でした。
これが本当に仕事をするってことなんだと、めちゃくちゃ楽しいなと心から感じました。

発売するまでにプレッシャーと激務から何度か胃潰瘍になったようですが、後にお医者さんに胃潰瘍の痕があるよと言われないと気付かないほど、熱中して毎日を過ごしていました。
何かに突き動かされて懸命に働いている瞬間ほど幸せなことはないですよね。

さて、初めて大きなチャレンジをしたあの日から、現在に至るまで様々なモノを従業員と毎年のように開発してきました。いつも業界で誰もやっていない製品づくりを目指しています。

黒板いっぱいに写せるプロジェクター 「ワイード」やAIで授業を可視化する「Josyu」、
映写に特化した「ブルーグレー黒板」、白華現象が起きない最高品質の不燃木材「白華レス」、地産地消の木をつかったモニュメント「モクロゴ」etc….
そしてこれから先もまだまだまだ、沢山準備中です。

サカワの企業理念が表すように、我々は未来のために最強の武器を作っていく集団に変貌しつつあります。
新しいものを作るということは通常の業務をこなしながらプラスでやらなくてはいけないので、
なかなかにパワーがいるのですが、新製品開発に抵抗を持ったり、ネガティブに捉える社員はいないように思います。
逆に「今年は新しいもの作らないんですか?」とプレッシャーを掛けられることさえあります。
僕は逆境や掛けられた期待にはめっぽう強いタイプなので、そのような意見は大歓迎です。
できる限りの力を尽くして、もっともっと世間を驚かす面白いもの仲間と一緒に作っていきたいと思います。
風はいつも吹いています。

では、また! 坂和 すしちゅう

Kocriについて語っているインタビュー記事(一部)

・開発前夜の記事
黒板と電子黒板を融合したハイブリッド黒板とは?みらいのこくばんについて(面白法人カヤック)

・開発してまもなくの記事
100年以上変わらない「黒板」の歴史をスマホで変える! 開発者にインタビュー(AppBank)

・最近の展望(2021年)
創業100年の黒板メーカーが語る、教育の未来と“黒板のない世界”へのアップデート(知財図鑑)


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この記事を書いたひと

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坂和 寿忠

株式会社サカワ4代目社長の坂和寿忠(トシタダ)です。愛媛県出身、1986年生まれ。大正時代に黒板製造業でスタートした弊社は創業100年を超え、教育分野という土俵はそのままに、今ではアプリを制作し、学校用プロジェクター「ワイード」を全国展開しています(今もグングン導入台数増加中)。 “日本一面白い黒板屋さんになる“ために面白いアイデアや仲間をいつも探しています。「こんな物を一緒に作れないですか?」「こういうこと出来ないですか?」なんていう面白いお話があればいつでも大歓迎です!FacebookやTwitterからメッセージお待ちしております。では、また! 「黒板屋四代目への直接相談フォーム」はこちら

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