創業百年黒板屋四代目の奮闘記 #11
こんにちは。今年は連日異常な猛暑が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか?
私は夏が大好きで暑くなればなるほど元気になっていく性分ですが、さすがに今年は外に出すぎるのをいつもよりは控えないとちょっと危なかったですねよね。まだ残暑もありそうですが、経口補水液、塩飴で乗り切りましょう!どうかくれぐれも皆様ご自愛ください。
さて、夏といえば夏季休暇もお盆もあり、世間が最もレジャーなどに出かけるいわゆる“遊ぶ”時期だと思うのですが、タイトルにあるように黒板屋の一番の繁忙期はこの夏期間なのです。
業界の人でないと知られていないことなので、「え、そうなんだ。学校は夏休み期間なのに?」という反応が良く返ってきます。
では、まずはなぜ夏が繁忙期なのか、それは
学校がやっていない期間(生徒さんがいない時期)=黒板屋にとって工事が沢山できる期間
ということだからです。
なので学校が一番稼働していない夏休み期間に、全国の黒板を新しくしたい!という依頼が学校様から各メーカーに一斉に飛んできます。私たち黒板屋はこの夏の”搔き入れ時”に特に仕事が集中します。(夏季入れ時、と呼んでもいいですね。これは僕がいま思いついた造語ですw)
今回は学校の先生方も知らないであろう、教室の黒板はどうやって新しくしているの? という疑問に答えるべく、詳しく解説をしてみたいと思います。
まず黒板を新しくする方法として、
1,黒板を全部丸ごと変えてしまう 総取換工事
2,既存の枠を残したまま、筆記面部分(板面部分)のみを交換する貼替工事
という、大きく2種類方法があります。
貼替工事は丸々新品にする1の工事に比べて、既存の黒板枠をそのまま使うことができるため、費用を安価に抑えることができます。そのため、80%の学校が貼替工事を選択されています。(もちろんその背景には新規の学校建設が少なくなっているということもありますが。)
今回はその貼替工事の中でも
「マグネットを使って、新しい黒板を貼り替えする方法(MC工法)」を皆さんに実際の写真を交えて説明していきます。
Before
↓
After
この沢山使ってくれた黒板が、こんなきれいに生まれ変わるまでの、プロの仕事をとくとご覧あれ。
工程は以下です。
①古い黒板を外す
②古い黒板の上にマグネットを張る
③マグネットの上に新しい面材を敷く
④新しい黒板を再設置する
まずは、
①古い黒板を外す。
まずは黒板面を外して下ろす工程からです。
枠と板面を押さえるために押さえ縁という四方を止めている部品があります。
その押さえ縁を外せば黒板は枠から外すことができます。
板面の重量はだいたい普通の学校のサイズ(W3.6m×H1.2m)ですと、20kg強あります。さらに今回の上の写真のような大型サイズになると50kgはゆうに超えますので、4~5人掛かりで外すことになるのですが、この作業ががまず大変。
「せーの、っっよいしょっっ!!!!」と声を合わせながら手足を怪我しないように床に下ろしていきます。
外すと枠と壁が出現するのですが、よくこのスキマに様々なものが残っています。
文房具やノートやプリントなどなど、誰がどうやって入れたのか分からないのものが沢山出てきます。
ちなみにこの黒板も校舎が立つときには新品で納品されたのですが、逆に一体どうやってこんなに大きいものを教室まで運んだのか気になりませんか?
実際は自らの手で階段から職人さんが運びます。ただ、あまり大きいものになると階段からは上げられないので、クレーンを使って窓から上げる場合もあるんです。黒板を設置するには、まず搬入するところから大変な重労働なのです。
②古い黒板の上にマグネットを張る ③マグネットの上に新しい面材を敷く
次に、床に下ろした黒板の上にマグネットを貼っていき、新しい黒板面をその上から丁寧に敷いていきます。
マグネットを貼る際には、空気が入らないように端から丁寧に敷いていくことがとても重要です。
もし空気が入ってしまうと、のちほど新しい面材を張るときに凹凸が出来てしまい、チョークの書き味に大きく影響します。スマホの保護フィルムを張るのにも結構苦労すると思うのですが、これだけの大きなサイズのものをきれいに貼るのは技術を要します。
ちなみに学校の形状によっては稀に黒板の中を下ろすことなく、そのままマグネットと面材を貼ることができる場合もあります。その時は独自に開発した治具を用いて使ってクルクルと施工していきます。これは一見簡単そうに見えますが、まっすぐに一発で黒板を張る、という神が掛かった技術が光るまさに超職人技なのです!
④新しい黒板を再設置する
さぁ、いよいよ最後にみんなの力を結集して新しくマグネットで貼った黒板を持ち上げて、枠にはめ込みます。
見てください、この職人さんたちの決死の持ち上げを。The 男の仕事!という感じです。
私も経験したことがありますが、これだけ大きなサイズの重量があるものを、しかも既存の枠に綺麗にはめ込むというのは本当に大変な作業なのです。そう簡単にうまくハマらないんですよ、これが。
「いくぞ、せーのよいしょー!!!右上もうちょっと上げて、はいOK!あ、上がりすぎ!!!逆に左上が変にハマった。んーーおぉぉぉぉぉぉ。ちょっと、一回外してもう一回入れ直すよ。気を付けて外して、もう一回!はい!!よいしょー---!!」
という具合で、この重量物を手で支えながら微調整してはめていくのです。
以上の工程を経て、ようやく完成です。新品の黒板の出来上がりです。(お疲れさまでした!)
先生方や生徒さんが毎時間向き合ってる黒板はこうして新しく生まれ変わります。
このような作業が学校が動いていない休暇中に毎日繰り広げられています。
もちろん登校日や部活などで学校には先生や生徒がいらっしゃることもありますので、廊下になるべく資材などを出さないようにしたり、出していても教室の決められた場所に置き場をルールを決めておくなど、常に安心安全を第一に作業をしていきます。
ただ、大変なことばかりだけではないんです。
実は黒板貼替をする前日、今までお世話になった黒板の最後の日。
生徒さんからこんなサプライズプレゼントが書き込まれていることがあります。
「今までお世話になった黒板へ。ありがとう。」
これは僕たち黒板屋しか見ることのできない貴重で最高にエモい光景です。
だからこそ僕たちはこれから新たに授業を支えられるよう最高のモノを納品しようと頑張るわけです。これこそ、黒板屋冥利に尽きる瞬間です。
黒板は歴史を辿れば100年前から大きく姿・形を変えずあり続け、今もなお学校で最も使われているツールとして存在し続けています。
いわば酸素のように「いつも教室にあり続けるもの。」
しかし、黒板を継続的に良い状態で使い続けるようにするには、我々のようなメーカーの影ながらの存在が不可欠です。ぜひ皆様に日本中の黒板屋さんの意義や技術、努力を知ってほしいと思います。最高にカッコいい仕事なんだよと。
さて今回はこのような黒板貼替についてのブログを書かせていただきましたが、特に学校関係者の皆様にとって少しでも何か参考になればと幸いです。この機会に教室の黒板を改めて見てみても面白いかもしれません。
最後にこの度サカワの黒板貼替ページをリニューアルしました!貼替のメリットや方法などをまとめた分かりやすいページになってますので、ぜひご覧くださいませ。> 「黒板の貼替」について
いつでも黒板の貼替や交換などご用命ください。ではまた!