皆様が「電子黒板」の選定で最も大切にしているポイントはどこでしょうか?
価格でしょうか?それとも機能面?
価格や機能の観点ももちろん大切ですが、もっと注目していただきたい重要な視点があります。
それは「映像の大きさ」です。
ディスプレイ型電子黒板であれば「画面映像の大きさ」、プロジェクター型電子黒板であれば「投影映像の大きさ」です。
(以下より、映像の大きさで統一します。)
電子黒板はいろんなことができる!その前に、大前提として「映像が問題なく見える」ことを気にしなくてはなりません。
どんなに機能が充実していたとしても、そこでやっていることが見えなければ意味がありません。
電子黒板の授業事例を見てみましょう。
ディスプレイ型電子黒板の授業事例ですね。
ディスプレイの大きさは、よく市場に出ている約「65インチ」ですね。
このような授業事例の写真を見るといつも思うのは、授業の内容よりも…
「本当にこの映像の大きさで全員が見えてますか?」
とても気になる。
おそらく、この映像の大きさでも見えるように、文字の大きさや太さ、色使い等の工夫をたくさん凝らしていることかと思います。
しかし、教室の中でどれだけの子どもたちが、その映像を問題なく見えているでしょうか。
今回は、電子黒板の「映像の大きさ」に注目して、“どの程度の大きさ”があれば、“どのくらいの範囲”まで、問題なく情報が届いているのか?について検証をしていきます。
まずは、電子黒板のこの「映像の大きさ」問題の分岐点となる、電子黒板の「分類」についてです。
ここ数年で流通している電子黒板は、大きく2つに分類ができます。
テレビのような見た目の「ディスプレイ型電子黒板」と、黒板やホワイトボード、スクリーンに投影して利用する「プロジェクター型電子黒板」です。
「ディスプレイ型電子黒板」と「プロジェクター型電子黒板」の特徴をまとめます。
特徴 | ディスプレイ型電子黒板 | プロジェクター型電子黒板 |
インタラクティブ機能 | タッチスクリーン指やペンで 直接操作 | 投影された画面に対して、専用のペンやセンサーで操作 |
明るさ | ディスプレイが直接光を発している 明るい教室でも見やすい | 使用環境下に依存することもある スクリーンを併用すると見えやすい |
黒板との親和性 | ディスプレイがメイン黒板で補足 | 親和性が高い 黒板に投影した映像の上からチョークで補足 |
一般的な大きさ (教育市場) | 65インチ(アスペクト比16:9) 50~86インチのラインナップ | 90インチ(アスペクト比16:9) 機種によるが70~130インチ程度 |
設置スペース | 主にはスタンド設置 レールによるスライド式設置方法もあり | 黒板上部に壁固定または天井固定で設置 卓上利用も可能 |
片方が圧倒的によい!というより、各々に長所・短所があります。
そのため電子黒板の選定の際には、なにを重視したいのか?を見極めることが大切です。
ディスプレイ型電子黒板とプロジェクター型電子黒板を比較した際に、決定的に違うのが「映像の大きさ」です。
それでは本題である、電子黒板の「映像の大きさ」について考えていきます。
今回お力を拝借するのは下記のシミュレーターです。
[object HTMLHeadingElement]
出展:Seiko Epson Corporation
シミュレーターに、「映像の大きさ(インチ数)」「教室の広さ(縦×横)」「座席数」を入力します。
教室前方にある映像に対して、“どの範囲まで最適に情報が届いているか?”が色の範囲で示されます。
下記は色の範囲が示す情報です。
緑色:Analytical Viewing Area
文字や文章、細かい情報が見える範囲
黄緑色:Basic Viewing Area
PowerPoint等で作成されたプレゼンテーションが見える範囲
黄色:Passive Viewing Area
映画や動画が見える範囲
それ以降:Unviewable Area
映像が見えない範囲
こちらのシミュレーターの優れている点は、文字・プレゼンテーション・動画の“どんな情報まで見えるか?”を把握することができ、座席の位置によって受け取ることができる情報が異なることが分かります。
できれば、全員が緑色の範囲である、文字や文章、細かい情報までが見えていてほしいです。
では、手始めに「ディスプレイ型電子黒板」で一番よく市場に出ている大きさである「65インチ」でシミュレーターにかけてみます。
「映像の大きさ(インチ数)」以外の条件は統一してシミュレーターにかけます。
【教室の広さ】公立小・中学校の普通教室の平均面積である64㎡想定*1
(シミュレーターの都合上、縦8×横8)寸法縦7×横9が多いみたいです。
【座席数】令和7年までに変わる学級編制標準の35人学級想定*2
(シミュレーターの都合上、縦6×横6で36席)かわいそうですがぎちぎちに座ってもらいます。
参考:*1ReseEd教育業界ニュース「教室面積、新しい学びに対応したゆとりある空間へ…文科省」
*2文部科学省「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律案」
映像の大きさが「65インチ」の場合、下記になります。
思っていた以上に可視範囲が狭いです。
緑の範囲である文字情報で考えると、前から2列目でも含まれておらずほとんどの子どもたちが見えづらいまたは見えていないことが分かります。
また、多くの授業で使われているプレゼンテーションの資料に関しては、前から3列目辺りのクラスの約半数しか見えていないということになります。(黄緑色の範囲)
概ね全体的に“映像”だけで考えれば、前から5列目辺りまでは見えているといったところでしょうか。(黄色までの範囲)
「65インチ」の大きさですと座席の配置によっては、範囲外である「映像が見えない」子どももいるかもしれません。
せめて、すべての座席が黄色の範囲である「映画や動画が見える」範囲に含まれる程度の大きさは担保したいところです。
そうなると、
再度登場。
こちらの「見えているのかなー?」という疑問。やはり…なのかもしれません。
65インチじゃ見えづらいですよね??
展示会でお話した方に、黒板と電子黒板を使ってどのように授業しているのか?を聞いてみたところ、
「導入された当初は黒板と電子黒板の両方を使って授業していたが、だんだんと電子黒板のみで授業をするようになった」
「やっぱ書く時間減るし、便利だよねー」と。
電子黒板が導入されていると答えた方に同じ質問をすると、やはり皆さん同様な回答をします。
授業の中の多くの時間で、電子黒板に注目する時間が多いことが伺えます。
すべてが「見えないわけではないが、細かいところまでは見えづらい」は、地味にストレスです。
次に、「ディスプレイ型電子黒板」の中でも大きいサイズにあたる「86インチ」の場合を見てみましょう。(シミュレーターの都合上、85インチ想定)
65インチの時と比較すると、すべての座席が色のついている見える範囲に含まれています。これは素晴らしいですね。
かつ“プレゼンテーションまで見える範囲(黄緑色の範囲)”が大半を占めています。
86インチ程大きいディスプレイであれば、映像が見えない…なんてことは起きないでしょう。
つい最近、86インチ型の電子黒板を見たのですが、まぁ大きい!大迫力といいますか。そしてきれい。
でもやはり、文字情報ほど細かい情報になってくると見えるのは座席数の3分の1程度でしょうか。
ここで、ディスプレイ型電子黒板の「65インチ」と「85インチ」で比較してみます。
やはり、すべての座席が見える範囲に含まれているのは担保したいところですね。
ディスプレイ型ですと、映像の大きさが大きくなればなるほど見えやすくなるのはもちろんです。
そして、ディスプレイの大きさもそれに比例してどんどん大きくなります。
基本的に教室の前方に電子黒板って置きますよね。
狭い教室の中で大きな大きなテレビの電子黒板、圧倒的にじゃ…です。
一番前の席で電子黒板から一番近いお子さんですと、机のすぐ横に電子黒板みたいなパターンもあります。
日本の教室の狭さを考えると、教育市場でよく出るサイズが「65インチ」になるのも納得です。
では、「プロジェクター型電子黒板」代表としてワイードを検証していきます。
ワイードは、弊社の主力製品・ウルトラワイド超短焦点プロジェクターです。
投影したい面と約60㎝の距離で、最大「130インチ」まで大きく投影することができます。
検証は、ワイードを一般的な黒板(縦約3.6m×横約1.2m)に投影した際の大きさである「120インチ」の場合で見てみましょう。(ワイードのアスペクト比16:6想定)
なんと!ほぼ「文字情報まで見える」緑色です!
座席数の3分の2以上で文字まで確認できることが分かります。
またすべての座席から、プレゼンテーションを確認することができます。
これは、ディスプレイ型電子黒板では本体自体の大きさの問題もあるため難しかったことです。
以前に、ワイードを導入いただいた学校さんの授業見学に伺ったことがありまして。
見学させていただいたのは、中学校1年生の英語の授業でした。
ワイードを使って、デジタル教科書をホワイトボードいっぱいに投影していました。
教室の後方の扉から覗くスタイルだったのですが、見学をしていてふと、あれ?なんか普通に見えるぞ。
一番後ろからでも、問題なく投影されているデジタル教科書の内容が十分に見えました。
あまりにも普通に見えるので、後ろから見ていたことを忘れてしまうくらいです。
ワイードに限らず、プロジェクター型電子黒板は黒板に投影した際、縦幅びちびちでアスペクト比4:3で約70インチ程度、16:9で約90インチ程度が担保されています。
ワイードであればアスペクト比16:6で約120インチ程度です。
この大きさまで来ると、ディスプレイ型電子黒板ではまだない大きさですね。
これがフラットな壁や壁面ホワイトボードであれば、さらに映像を大きくすることができるでしょう。
(各社によって仕様は異なるので確認してくださいね!)
しかも短焦点プロジェクターであれば、この映像の大きさも場所を取らず省スペースで叶います。
狭い教室でも全然OKです。
配線周りは黒板周辺に集約されるので、コンセントやHDMIケーブルに引っかかる心配もありません。
壁面固定または天井固定にてプロジェクターを設置すれば、プロジェクターの光でまぶしい!ことも、自分の影が入ってしまう!そんな心配もありません。
以上、ディスプレイ型・プロジェクター型電子黒板の「映像の大きさ」に注目しました。
選定の際にはさまざまな視点で見ていき、大変多くの方が関わり決定がされていくことは重々承知しております。
限られた予算の中で、いかに先生や子ども達にとってよいものを導入するか?長い期間をかけて選定されます。
自治体様で規模が大きい地域では、数年単位で検討がされています。
はじめにも述べましたが、電子黒板はまず見えることが大前提です!!見えてこその多種多能な機能たちです。
もちろん、価格も機能の面も大切ですが、ぜひその選定ポイントの中に「映像の大きさ」も入れてください。
安く大量購入できるからって、映像サイズの小さいものはなるべく避けてください。
実際に、その電子黒板を使って授業をする先生や子どもたちを思い浮かべて。
シミュレーターによる検証ではありますが、皆様の電子黒板の選定の参考になりますと幸いでございます。
最後に映像の大きさごとに、シミュレーターの参考資料をまとめます。