お世話になります。創業105年の黒板・電子黒板のメーカー 株式会社サカワです。
この度、2025年2〜3月に地元の愛媛県立東温高校で「黒板アート×映像プロジェクト」を実施しました。
東温高校の卒業生の門出をお祝いするために、美術部1・2年生とサカワが協力し、黒板アートと映像を組み合わせた作品「デジタル黒板アート」を共同制作するプロジェクトです。卒業生に向けて何かを贈りたいという在校生や先生の想いを、黒板アートで表現することに致しました。
学びの多い取り組みでしたので、作品制作や本番までの様子を社員視点でレポートし、完成作品や、卒業生と参加者の感想も合わせてご紹介します!

東温高校は、サカワ本社がある愛媛県東温市で唯一の高校。工場見学などで会社に訪問して頂くこともあり、以前から交流がありました。今回、卒業という大事な節目の日に関わらせて頂けたことを光栄に思いますし、少しでも卒業の日の1ページを華やかに彩れていたなら嬉しいです。
本プロジェクトの過程や完成作品を通して、高校生の表現力や活力、黒板アートの魅力・表現の幅広さを知っていただければ幸いです。
目次
プロジェクト概要・参加者

企画の中心となったのは東温高校美術部の1・2年生です。
普段は、製品を提供する立場として学校と関わることが多いのですが、今回は生徒と一緒に企画を行い、共に表現を探求しながら、制作者である生徒にとっても良い経験となればと考えておりました。
<制作から発表までの流れ>
▼ 2月
・卒業生に向けたメッセージを込めて、美術部員一人一人がデザインを考案
・「チョーク」部分と「映像」部分の原案を決定
・美術部顧問の先生が担任を受け持つ3年4組の教室でお披露目することに決定
・先行して「映像」部分を制作
・サカワから地元メディアへ向けて企画の周知
▼ 2月28日
卒業式前日。放課後、3年4組教室でデジタル黒板アート作品を制作
▼ 3月1日
東温高校の卒業式の日、3年4組ホームルーム中にデジタル黒板アート作品を発表
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部員が持ち寄ったデザイン案を元に、「桜の木」のモチーフが共通していた2年生生徒と1年生生徒の2名の絵を組み合わせて、黒板アートの原画を仕上げていただきました。
2月27日までは3年生の教室で制作を進めることができないため、2月28日の放課後に、美術部1・2年生約12名が集合し、限られた時間で一斉に黒板アートを描きました。
黒板アート制作〜チョーク編〜

チョークを使って黒板に絵を描きます。東温高校では、普段の授業はホワイトボードに置き換わっているため、実は黒板やチョークは扱い慣れていませんでした。そのため、制作は試行錯誤の連続です。そして時間との戦いでした。
まずは横長の映像が投影できるプロジェクターを使います。絵の原画を黒板の端から端まで拡大して映し出すことができました。


原画を頼りにしながら、最初は原画をなぞるようにしてチョークで絵を描き進めます。この方法は黒板アートの描き始めにピッタリだなと感じました!色の使い方、塗り方、映像を消した時の見え方をこまめにチェックします。
年季の入った黒板に描くため、想定よりもチョークの粉が黒板に馴染まず色ムラができやすい状態でしたが、描きながら解決策を練りました。チョークを立てて描く、暗い部分をあえてチョークで塗らずに黒板の地の色を残すなど、工夫を重ねていきます。
当社は創業105年の黒板屋ですが、まだまだ黒板は奥深いなと思わされました。




黒板アート制作〜デジタルで絵を動かす編〜
プロジェクターを活用し、イラストやエフェクト、「卒業おめでとう」などの映像を映し出します。
<映像で表現すること>
- 清々しい風が吹く卒業の日 ⇒桜やシャボン玉が舞う。髪の毛が風になびく
- ノートのページが1枚1枚めくれて、溢れる高校生活の思い出
- 卒業生の華々しい未来を願う、キラキラとした効果
部員と相談しながらどのような映像を作るか決定し、原画とピッタリ合うようにアニメーションを制作しました。
チョークと映像が組み合わさることで表現の幅が広がったと思います。黒板アートの醍醐味は、黒板いっぱいに大作を描けること。そこに映像が加わると迫力も倍増です。

途中で何度も映像を流して、仕上がりを確認します。映像がチョークに馴染むように、アニメーションの輪郭線をぼかして最終調整。作品性を高めていきます。
窓の外が暗くなり、映像の光が際立ち始めた頃、ついに完成しました。卒業の日は快晴の予報!ホームルームの時間までは黒板を隠します。


卒業式後のホームルームで、デジタル黒板アートお披露目


完成した黒板アートは、卒業生にとってサプライズで披露されました。
そのため、体育館で卒業式が執り行われている間、当社スタッフが黒板アートの教室で準備を進めます。前日からずっと地元メディアや東温市役所の広報の方が取材にきてくださっており、この時も教室で一緒に生徒の到着を待ちました。
卒業式を終えて、3年4組の30名が教室へ戻ります。黒板いっぱいに描かれた絵を見て次々と上がる声。「すご!」「教室間違えたのかと思った」「びっくり」「先生が描いたんかな?」「先生の睡眠時間、1時間やろ」。
そして始まる3年4組最後のホームルーム。先生の合図でデジタル黒板アートの映像上映へ。

教室の照明が落とされ、デジタルとアナログが融合した黒板アートが浮かび上がると、生徒の皆さんや保護者の方が真剣な眼差しで黒板に向き合います。
作品のテーマは、「明るい未来の扉が開く」


1ページずつ本をめくるようなアニメーションや、桜やシャボン玉が舞う映像をチョークの絵の上に重ねて、明るい未来を表現しています。黒板アートと映像が融合して、今までにない光景が目の前に広がりました。
上映後はホームルームで担任の井上先生からメッセージが贈られます。「自分の人生を投げ出さずに向き合ってほしい。明るい未来が待ってるから」。3年4組の生徒さんが「先生の言葉を聞いて込み上げてくるものがあった」と後からお話されていた通り、教室のそばにいた私たちスタッフの胸にも深く響きました。
デジタル黒板アート作品 全編を公開
卒業生と保護者の感想

<動く黒板アートはどうでしたか?>
● 卒業生
・え?絵が動いている!と驚きました。高校生活の今までの思い出が蘇ってきました。
・絵に命が宿ったように見えました。
・(動く黒板アートが)初めてだったんですけど、観たことないくらい綺麗でした。
・物語が伝わってきました。
・細かいところまで丁寧に描かれてて綺麗だなと思いました!
・影まで立体的につけられていて、端から端まで細かくて、立体感があって迫力が凄かったです。
・黒板の絵もすごいんですけど、映像と相まって明るく見えて、これから頑張ろうって思いました。
● 美術部3年生の先輩
クラスのために私のために頑張って描いてくれたのはすごい嬉しかったですし、卒業式から帰ってきて扉の隙間からちらっと見えたときに本当にびっくりしました。
黒板アートそのものでもすごい綺麗だったんですけど、映像がつくことでより華やかになったというか、彩りが生まれた感じがしました。美術部は絵が得意とか苦手とかじゃなくて好きだから集まってくれていると思うので、自分の想いとか好きな気持ちとかをどんどん表現していってほしいなと思います。
● 保護者の方
・ありがとうございました。すごく良かったです。感動しました。黒板って昔は結構ありましたが、今はホワイトボードなどに変わっていて見なくなっていたので懐かしかったです
・映像と一緒になると違っていました。より一層感動しましたね。動きがあると感じ方も違ってこんな風にできるんだと思いました。
・黒板は描いたものが動かないのが前提だと思っているので、それがプロジェクターで動いて驚きました。
<高校生活は楽しかったですか?特に楽しかった思い出は?>
・体育祭!特に何ということではなくみんなで盛り上がれたのが楽しかったです。
・めちゃめちゃ楽しかったです!東京への修学旅行が特に思い出に残っています。
美術部1・2年生と井上先生の感想

<黒板アートの企画を聞いてから制作を終えるまでどうでしたか?>
● 部長
個人で先輩にお手紙を送ることはあったけど、美術部として先輩に贈るというようなものはやったことがなかったのでどうなるかな?と思いました。原画がとてもよかったです!
制作中はしんどい時もありましたが、いざ先輩方が喜んでいる姿を見ると頑張ってよかったと思いました。
● 原画担当の2年生女子部員(桜の木・シャボン玉の絵)
3年生にはすごくお世話になりました。
黒板に描いただけで紙に描くのとは違う味が出る感じがあっていいなと思いました。普段使っている画材とは全然違っていました!普通に描いても違うし、ぼかしても違うし、使える色に種類は多くないですが逆にどんな表現もできるなと思いました。また機会があったらやってみたいです。
(出来上がった絵を見て)純粋に桜が卒業に合うというのもあるのですが、卒業した後に花開くみたいな意味を込めて原画の一部を描きました。卒業の1ページをきれいに飾れたので満足しています。自分の描いた桜と映像の花びらが融合されたのがよかった!「動いた!」って感動しました。原画にはない更にいろんな色を足してくれて、後輩が一生懸命描いてくれたというのが何より嬉しかったです。
● 原画担当の1年生女子部員(人物・学校用具の絵)
3年生の先輩と多くの時間は過ごせませんでしたが、体育祭のパネル制作のお手伝いに行った時に関わり合うことができました。
今回、黒板アートが初めてなので何を描こうかなと。難しいことは考えずに卒業シーズンらしいものを描きました。絵を描いている時は夢中で没頭できて楽しいです。
● 部員
・自分達が描いた絵の前で写真を撮っているのを実際に見ると本当にやって良かったと疲れが吹っ飛びました。
・ちゃんと難しかったですが、楽しくて充実感がありました。
・(Q. 自分達が卒業する時もあったらいいなと思いますか?)はい!(皆さん同調)
<今回の企画を通してどうでしたか?>
● 井上先生
今日は人が多かったので3年4組の生徒達も若干緊張していましたが(笑)、みんな嬉しそうにしていたと思います。黒板アートは本当にきれいにできました。やってみてよかったです。今後は芸術的な科目が増えることもあり、美術部だけでなく企業とコラボできたら生徒にとってもいいことだなと。企業と生徒が一緒にやるというのが今の高校生としては最高にいいと思います。
【儚い】描いた黒板アートを消す瞬間

3年4組の黒板アートは、作品が完成してから1日も経たず、制作者自らが消しました。黒板アートは消すところまで含めて作品とも言えます。何年も保存されるわけではありません。その分、儚さも感じますが、消えてしまうからこそ、制作して終わりではなく、描いては消しての繰り返しで物語が続いていくような気がします。
また来年、新しい高校3年生が1年間過ごされる教室。この黒板は生徒の背中を見守り続けることと思います。
学校×企業の地域密着型コラボ

東温市で唯一の高等学校である東温高校は、2026年度(令和8年度)より新たなステージへ進化し、これまでの普通科と商業科に代わり、生徒一人ひとりの個性や進路に寄り添う「総合学科」 を新設します。地域と協働した探究活動を軸に、実社会で活きる学びを深める教育環境を整えていくということです。高校生のうちから社会との関わりを意識するという意味でも、今回の地元密着型コラボレーションは意義のある取り組みになったのではないかと思います。
このプロジェクトに関わった社員も、生徒たちの創造力に触れて刺激を受けました。
今後またデジタル黒板アートを制作する機会があれば、「チョークの塗り研究」や「映像台本づくり」など、さらに生徒と挑戦することもできそうです。
学校との交流を通じて会社が目指すこと

<黒板アートの面白さを再発見>
黒板アートの文化は、「黒板アート甲子園」などの普及で、より学校に身近なものになってきました。ただ、黒板はホワイトボードや電子黒板におき換わり、黒板アートの良さが広がるチャンスは今後減ってしまうのかもしれません。
今回、チョークに動きを加えることで、さらに人の感情に訴えかけたり、インパクトのある演出ができることを学びました。連想するのは「プロジェクションマッピング」。建物に映像を組み合わせるのが主ですが、デジタル黒板アートもその一種と言えそうですね。アナログとデジタル、両方の面白さを再発見しました。
チョークアートは確立された表現方法の1つですが、デジタルと組み合わせることによって、今回のように表現の幅が広がります。動かないはずの絵が動くと、空間の広がりや感情表現が豊かになるという側面があり、作品を見る人自身の記憶が呼び起こされるきっかけになるというのは、映像ならではの良さだと思います。
黒板アートは、一時的な作品にとどまらず、想いを伝える手段としても共感してもらえそうです。アートに苦手意識がある子も含めて、黒板というキャンバスが気軽に自己表現できる場になればと思います。
<先生や生徒にエールを送る。地域に貢献する>
今回のような取り組みや製品を提供する立場で学校に訪問すると、学校の教育に対する熱量を肌で感じることができます。その一方で、多くの学校では労働環境が課題と言われております。教育業界の人手不足問題にもつながってしまうため改善が急務です。
私たちは教育に関わる企業として、少しでも教育業界に尽力したいと考えております。先生の負担を軽減し、子どもたちの充実した学びに寄与できる製品づくりに加え、企画やイベントでも微力ながら地元や学校を盛り上げて、学校や先生、生徒の魅力を伝えていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。



地元テレビ局による密着【動画】
【南海放送に密着していただいた動画】
【愛媛新聞の記事】
【東温への愛が止まらない、東温市広報】
・Instagramの投稿はこちら
・広報紙2025年5月号にも掲載予定です!
【今回用いたプロジェクターをお貸出できます!】
https://www.sakawa.net/contact/form__wiiide_sales
「お問い合わせ内容」にお書きください。
黒板アートを描く際、プロジェクターで絵の原画を黒板に映してあげると、描き始めのハードルが低くなると思います。挑戦される方はぜひ試してみてください。
プロジェクターに関して:
当社は創業以来100年以上、学校の黒板を作り続けてきました。近年は電子化の流れもあり、ICT教育事業も展開しています。近年は、デジタルの良さも授業に取り入れたいという先生方の要望もあり、黒板の端から端まで映像が映るプロジェクター(ワイード)を開発した経緯があります。東京駅のプロジェクションマッピングから着想し、アナログとデジタルを融合させ、既存の黒板にプロジェクションマッピングする仕組みを学校の授業に持ち込みました。
黒板やホワイトボードに映像を映す授業スタイルは一般化してきており、2025年3月現在、TBSテレビ『御上先生』などの学園ドラマでも話題の授業スタイル。あらかじめ用意した文章、画像、複雑な図形などを、簡単に黒板に映し出せるため、板書の手間を大幅に減らすことができます。ワイードは、チョークのみだった授業の延長線上でデジタルを取り入れられることから、幅広い年代の先生に活用していただいています。
授業に限らず、黒板アートとも相性が良いのではないかと思い、デジタル黒板アートでも活用しました。